知名度とは?認知度との違い
知名度は、会社や商品の名前が、どれだけ多くの人に知られているかを表す言葉です。認知度も似た意味で使われますが、名前だけでなく、何をしている会社か、どんな特徴があるかまで知られている度合いを指すことが多い言葉です。この記事では、知名度を「名前が知られている度合い」、認知度を「事業内容や特徴まで知られている度合い」として区別します。
たとえば、地方で金属部品の加工をしている会社があるとします。創業から長い年月がたち、国道沿いに看板も出しているため、地元では多くの人に名前を知られています。しかし、扱える材料や加工精度など、具体的な強みまではほとんど知られていません。この会社は、知名度は高くても、認知度は低い状態です。
その先に、もう1つの段階があります。部品の試作が必要になったときに、「小ロットの試作なら、あの会社」と名前が浮かぶ状態です。これは、名前や事業内容を知っているだけでなく、具体的な依頼と会社名が結びついている状態です。
| 段階 | 相手が知っていること | 用件ができたときに起きること |
|---|---|---|
| 名前を知っている(知名度) | 社名を見聞きしたことがある | 候補として浮かぶとは限らない |
| 何の会社か知っている(認知度) | 事業の中身や特徴 | 探したときに、候補として見分けられる |
| 用件と一緒に思い出される | 「この用件なら、この会社」という結びつき | 用件から、候補として名前が出てくる |
選ばれる場面で効くのは、3つ目の段階です。名前を知っているだけの会社は、用件ができても、候補として浮かぶとは限りません。名前を知られている段階から、用件と一緒に思い出される段階へどう進むかは、ブランディングの記事でさらに詳しく解説しています。
関連記事ブランディングとは、選ばれる理由を決めて発信し続けること
この記事でいう「知名度を上げる」は、1つ目の段階を広げることです。そのうえで、3つ目の段階までつなげるにはどうすればよいかを、後半で考えます。
知名度が上がると何が変わるか
知名度を上げたい理由として、よく挙げられるのは次のようなものです。
- 用件ができたときに、候補に入りやすくなる
- 発注する側の社内で説明しやすくなり、承認を得やすくなる
- 求人を出したとき、応募する人の目に留まりやすくなる
- 広告や営業のときに、「聞いたことがある会社」として話を聞いてもらいやすくなる
- 取引先や金融機関から信用されやすくなる
いずれも知名度によって期待できる効果です。ただし、その多くは「選ばれる手前」の段階で働きます。
発注先が決まるまでの流れを、「用件ができる」「候補に入る」「比べられる」「選ばれる」の4段階に分けてみます。知名度が大きく助けるのは、候補に入る段階です。比べられる段階でも、「名前を知っている会社だから安心」という印象が、一定の後押しになることはあります。発注する側が社内で説明しやすくなるのも、この安心によるものです。しかし、最終的な判断を左右するのは、価格や実績、担当者の対応など、その会社を選ぶ具体的な理由です。
知名度が上がって問い合わせが増えても、比べられたときに明確な決め手がなければ、価格だけで判断されたり、競合他社が選ばれたりします。名前は知られているのに最後の比較で負けるなら、見直すのは知名度ではなく、選ぶ理由のほうです。何を残して何を変えるかは、リブランディングの記事でさらに詳しく解説しています。
知名度を上げる施策
知名度を上げる施策は数多くありますが、大きく4つに分けられます。
広く届ける
テレビ・ラジオ・新聞・交通広告・看板などのマス広告と、Web広告・SNS広告です。短期間で、多くの人に情報を届けられます。一方、出稿を続けるには費用がかかり、停止すると新たな接触機会は減少します。
話題にしてもらう
プレスリリース、取材、イベントやセミナー、展示会、地域のイベントやスポーツチームへの協賛、インフルエンサーとの協業などです。広告より費用を抑えられるものもありますが、取り上げるかどうかは相手が決めます。取り上げてもらうには、新しい取り組みや数字で示せる実績など、ニュースとして扱う価値のある材料が必要です。
探して見つけてもらう
ホームページ、自社のコラム(オウンドメディア)、SEO、SNSの運用、動画などです。相手が何かを調べたときに、見つけてもらう方法です。効果が表れるまでには時間がかかりますが、公開した記事やページは自社の資産として蓄積され、継続するほど検索やSNSからの入口が増えていきます。
すでにある接点で覚えてもらう
名刺や会社案内、営業での説明、取引先からの紹介、口コミ、採用活動などです。届く範囲は狭いものの、相手はすでに何かの用件を持っていることが多く、その用件と一緒に名前を覚えてもらえます。
4つの施策を、「届く範囲」と「継続による蓄積性」という2つの観点で整理すると、次のようになります。
並べてみると、短期間で広く届けられる施策ほど、実施を止めた後は効果が続きにくい傾向があります。一方、継続によって情報や関係が蓄積される施策は、一度に届く範囲が限られます。それぞれに適した場面があり、どれか1つが常に正解というわけではありません。施策によって異なるのは、必要な予算や手間、成果が表れるまでの時間です。
4つを、費用と手間で比べると、次のようになります。
| 費用のかかり方 | 社内の手間 | 効き始めるまで | 向いている場面 | |
|---|---|---|---|---|
| 広く届ける | 出すたびにかかり、止めれば止まる | 外注すれば抑えられるが、方針決定や確認は必要 | 出した日から | 期間が決まった告知(新商品・採用の募集) |
| 話題にしてもらう | 小さく始められるものもある | 伝える中身をつくる手間 | 取り上げられたとき(時期は相手しだい) | 新しい取り組みや実績があるとき |
| 探して見つけてもらう | 書く・作る人の時間が主 | 書き続ける・更新する手間 | 成果が表れるまで時間がかかることが多い | 相手が調べてから選ぶ用件 |
| すでにある接点で覚えてもらう | ほとんどかからない | 説明と記録をそろえる手間 | 次の接点から | 取引先や紹介が仕事の入口になっている会社 |
では、どれから手を付ければよいか。それを決める前に、知名度という数字がどう動くものかを見ておきます。
知名度は、事業が育った結果として上がる
名前が広く知られている会社を思い浮かべてみてください。多くの会社では、商品やサービスが売れ、取引先や利用者が増えるにつれて、名前も広く知られるようになります。大きな広告で名前を広めるにも、その広告を続けられるだけの資金と事業が要ります。知名度の多くは、事業が育つのに合わせて、後からついてくるものです。
この動きを確かめる手がかりの1つが、Search Console(Googleが無料で提供している、検索での表示状況を見る管理画面)で見られる、社名を含む検索での表示回数です。社名で検索する人は、すでにその会社を知っており、商品や採用、評判など、何らかの情報を確認しようとしている人です。取引先や利用者が増えれば、社名で検索する人も増える可能性があります。その結果、社名を含む検索で自社サイトが表示される回数も増えることがあります。広告や広報によって一時的に増えることはありますが、事業の成長や継続的な接点にも左右されるため、単独の施策だけで安定して積み上げられる数字ではありません。
ここで、公開直後のサイトにどのような検索が発生するのか、このサイトのデータを例に見てみます。このサイトは、2026年9月7日に最初の記事を公開し、その後も記事を公開し続けてきました(9月21日時点で24本)。最初の公開の翌日から9月22日までの15日間に、Search Consoleで確認できた数字は次のとおりです。
この15日間に、このサイトのページが検索結果に表示された回数は、71回でした(1回の検索で2つのページが出れば、2回と数えています)。そのうち、どんなキーワードで検索されたかが分かる表示は48回で、どれも記事のテーマのキーワードです。社名を含む検索での表示は、キーワードが分かる範囲では0回でした。トップページは、社名で検索されたときに出やすいページです。そのトップページが表示されたのは3回で、3回とも検索したキーワードが伏せられているため、社名での検索だったかどうかは分かりません。Search Consoleでは、検索された回数がごく少ないキーワードなどは、検索した人のプライバシーを守るために表示されません。
記事を公開し続けていても、社名を含む検索での表示は出てきませんでした。記事は、会社の名前ではなく、読む人が調べている用件のほうで、検索結果に表示されていたことになります。記事のテーマで調べた人が、検索結果で初めてこの会社の名前を目にする、という順番です。自社について確認する場合は、Search Consoleで、社名を含まない検索キーワードも確認してみてください。そこに並ぶキーワードが、いま自社の名前が検索結果に出ている用件です。
知名度だけを短期的な目標にすると、施策を評価しにくいという問題が生じます。施策を続けていても、知名度を示す数字は短期間では動かないことが多く、施策の効果をすぐには判断できません。
ここで、知名度を上げたいと思ったきっかけを振り返ってみます。問い合わせが少ない。求人に応募が来ない。困っているのは、名前を知られていないことそのものでしょうか。名前を知られていないことより、用件ができたときに候補に入っていないことのほうが、原因かもしれません。
狙うのは「何の用件で思い出されるか」
用件ができたとき、人が候補を集める道は、大きく3つあります。
- 思い出す:頭に浮かんだ会社を候補にする
- 探す:検索や比較サイト、展示会で探す
- 人に聞く:取引先や知人に尋ねる、紹介してもらう
どの道を通っても、候補に入るのは、用件と会社の名前が結びついている会社です。3つの道で異なるのは、用件と会社名を結びつける情報がどこにあるかです。思い出す道では相手の頭の中、探す道ではページや検索結果の中、人に聞く道では紹介する人の頭の中にあります。この記事では、こうして特定の用件と会社名が結びつき、候補として挙がることを「思い出される」と表現しています。相手が自分で思い出すこともあれば、検索結果や紹介する人が、相手の代わりに名前を出すこともあります。
こう考えると、多くの企業にとって優先すべきなのは、名前をできるだけ広く知ってもらうことではありません。自社が選ばれたい相手の、特定の用件と結びついて、候補に名前が挙がる状態をつくることです。第1章の部品加工の会社なら、「小ロットの試作を急ぎで頼みたい」という用件で、設計担当者に直接思い出してもらうか、検索結果や取引先からの紹介を通じて候補に入れば十分です。その用件と関係のない人に名前を知られても、仕事にはつながりにくいものです。
第1章の部品加工の会社が、急ぎの試作を受けられるのが月に数件なら、その数件を埋めるだけの相手に思い出されれば足ります。受けられる仕事の量から、知られる範囲を決める考え方は、BtoBブランディングの記事で、稟議の通り方と合わせてさらに詳しく解説しています。
関連記事BtoBブランディングは、担当者が社内で説明できる材料を整えること
施策は「誰に、何の用件で」から選ぶ
第3章の施策は、次の順番で選びます。
- 思い出されたい相手を1つ決める。発注してほしい相手、応募してほしい人、紹介してくれる取引先など。問い合わせの獲得と採用の両方が課題なら、今期、より優先度の高いほうから決める
- その相手が抱える用件を、相手自身が使う言葉で1つ書き出す。「精密加工」のような自社の言い方ではなく、「小ロットの試作を急ぎで頼みたい」のように、相手が困ったときの言い方にする
- その用件ができたとき、相手が第5章の3つの道のどれを通るかを考える。分からなければ、今の取引先に、最初にどうやって自社を知ったかを聞いてみる
- その道にある施策を、第3章の4つから選ぶ。思い出す道には、すでにある接点で覚えてもらう施策と広く届ける施策が、探す道には、探して見つけてもらう施策と展示会が、人に聞く道には、取引先や紹介してくれる相手との接点が当たる
- どの接点でも、同じ用件に応えられることを言い続ける。言い方は媒体に合わせて変えてよく、そろえるのは中身
第1章の部品加工の会社で考えると、次のようになります。
| 思い出されたい相手 | 用件(相手の言葉で) | 通る道 | 選ぶ施策 |
|---|---|---|---|
| 発注する会社の設計・購買の担当者 | 小ロットの試作を急ぎで頼みたい | 探す(検索・展示会)/人に聞く(取引先) | 加工の事例を載せたホームページとコラム、展示会、取引先からの紹介 |
| 応募してほしい人(近くに住む求職者) | 地元で、手に職をつけられる仕事を探したい | 探す(求人サイト・検索)/人に聞く(家族・学校) | 採用ページ、工場見学、近くの学校との接点 |
| 紹介してくれる取引先 | こういう加工ができる会社を知らないか、と聞かれた | 思い出す | 納品や打ち合わせのたびの説明、名刺・会社案内の書き方をそろえる |
同じ会社でも、相手が変われば、通る道も選ぶ施策も変わります。「知名度を上げる」という1つの目標にまとめてしまうと、この違いが見えなくなります。表にテレビ広告が入っていないのは、テレビ広告が悪いからではありません。例に挙げた3つの相手には、テレビ広告よりも直接的に、用件と会社名を結びつけられる接点があるからです。
業種が変わっても、考え方は同じです。たとえば地域の歯科医院なら、思い出されたい相手は近くに住む子育て中の家族で、用件は「近くで、子どもを連れて行ける歯医者を探したい」になります。この用件ができたとき、相手は地図で検索して口コミを見るか、知り合いに聞きます。選ぶ施策は、地図に出る医院の情報と口コミ、通っている家族からの紹介です。
5つ目の「同じ用件に応えられることを言い続ける」は、見落とされやすい手順です。同じ発注の担当者に向けて、ホームページでは「精密加工」、展示会では「多品種に対応」、営業資料では「低コスト」と、接点ごとに違うことを言っていると、何度名前に触れても、どの用件で頼れる会社なのかが伝わりません。接点ごとに言うことをそろえる考え方と、言葉だけでなく見た目までそろえる話は、第1章で紹介したブランディングの記事で説明しています。
探す道の施策として自社のコラム(オウンドメディア)を選んだときに、始めるかどうかの決め方と、記事を書く前に決めておくことは、オウンドメディアの記事で解説しています。
関連記事オウンドメディアとは?ホームページとの違いと、記事を書く前に決める分け方と設定
知名度をどう確かめるか
確かめ方は、主に次の4つです。
| 確かめ方 | やり方 | 分かること | 注意 |
|---|---|---|---|
| アンケート(名前を見せない) | 「小ロットの試作を急ぎで頼める会社といえば、どの会社が思い浮かびますか」のように、具体的な用件を示して尋ねる | 用件と一緒に思い出されているか | 聞く相手が偏ると、数字も偏る。調査会社に頼むと費用がかかる |
| アンケート(名前を見せる) | 社名を見せて「知っていますか」と聞く | 名前を知られている広さ(知名度) | 知っていても、候補に入るとは限らない |
| 社名を含む検索での表示回数 | Search Consoleで、社名を含む検索キーワードで自社サイトが表示された回数を見る | 社名を含む検索で、自社サイトが表示された回数やページ | 会社が育つのに合わせて動く数字。短い期間の増減で施策を判断しない |
| 名指しの問い合わせと、どこで知ったか | 問い合わせのたびに、何の用件で、どこで知ったかを聞いて記録する | どの道で、何の用件で候補に入ったか | 聞き方と、記録する項目を毎回そろえる |
アンケートは、用件と一緒に思い出されているかを直接確かめられる方法です。社名を含む検索での表示回数は、Search Consoleの「検索パフォーマンス」で、検索キーワードを社名に絞り込むと確認できます。ただ、絞り込みに入るのは、検索キーワードが分かる表示だけです。第4章のこのサイトのように、社名での検索が少ないうちは、キーワードが伏せられて数字に出てこないことがあります。
すぐに始められるのは、4つ目です。問い合わせや応募があったら、何の用件で、どこで知ったかを聞いて記録します。問い合わせフォームに「どこで知りましたか」の欄を1つ足し、電話での問い合わせでも同じ項目を確認し、「日付」「相談内容」「知ったきっかけ」の3項目を表に残すだけで始められます。第6章で決めた相手から、決めた用件で問い合わせが来ていれば、その相手の中で、用件と名前が結びつき始めています。件数が少ないうちは、単純に集計するよりも、問い合わせの背景を1件ずつ確認したほうが、多くの気づきを得られます。
ARROWSのブランディング
第6章の5つ目で、どの接点でも同じ用件に応えられることを言い続ける、と書きました。言い続ける中身が決まっていないと、ホームページ、会社案内、展示会で、言うことが少しずつずれていきます。ARROWSのブランディングでは、この中身を決めるところからお手伝いしています。
まず、経営者の方のお話や現場の方の言葉、お客様の声を集め、誰から、何の用件で、なぜ選ばれてきたのかを会社の中から掘り出します。競合の会社が掲げている言葉も並べて、まだ打ち出されていない強みを生かした言い方を探し、方向の異なる3つの案を比べて決めます。
決めたことは、タグラインや会社の紹介文、色や書体といった決まりにまとめ、ホームページ・会社案内・展示会・名刺・SNSのどれでも、同じ中身を伝えられるようにします。第5章で書いた「何の用件で思い出されるか」を、どの接点でもそろえて伝えるための土台です。
まとめ
知名度は、会社の名前がどれだけ多くの人に知られているかを表す言葉です。ただ、名前が知られていても、用件ができたときに思い出してもらえなければ、問い合わせや相談にはつながりません。
- 知名度は名前を知られている広さ、認知度は何の会社かまで知られている度合い。選ばれる場面で効くのは、その先の「用件と一緒に思い出される」段階
- 知名度が大きく助けるのは、候補に入るまで。最後に選ばれるかどうかは、選ぶ理由で決まる
- 施策は、広く届ける/話題にしてもらう/探して見つけてもらう/すでにある接点で覚えてもらう、の4つ。広く届くものほど、止めると効果が続きにくい
- 知名度は、事業が育った結果として上がる。社名を含む検索での表示回数は、単独の施策だけでなく、事業の成長や継続的な接点にも左右される
- 施策は、誰に、何の用件で思い出されたいかを決めてから選ぶ。相手が変われば、選ぶ施策も変わる
まずは、思い出されたい相手を1つ決め、その相手の用件を、相手の言葉で書き出してみてください。あわせて、次の問い合わせから、何の用件で、どこで知ったかを聞いて記録してみましょう。




