コーポレートブランディングとは、会社として選ばれる理由をつくること

コーポレートブランディングは、会社そのもののブランドをつくる取り組みです。企業ブランディングとも呼ばれます。何を大事にし、誰に何を約束する会社なのかを決め、それが取引先、働く人、地域の人に同じように伝わるようにします。

よく比べられるのが、プロダクトブランディング(商品やサービスのブランディング)です。プロダクトブランディングは、個々の商品やサービスを選んでもらう理由をつくります。伝える相手は、主にその商品を選ぶ人です。コーポレートブランディングは、会社を選んでもらう理由をつくります。伝える相手は、取引先、求職者、地域の人など、会社と関わる人すべてです。

会社のブランドの上に、商品のブランドが載る 商品A 商品B サービスC 会社(何を約束する会社か) プロダクトブランディング 商品を選んでもらう理由。伝える相手は その商品を選ぶ人 コーポレートブランディング 会社を選んでもらう理由。伝える相手は 取引先・求職者・地域の人
図1:会社のブランドの上に、商品のブランドが載る。

コーポレートブランディングは、商品ではなく会社を選んでもらう理由をつくる取り組みです。 ブランディング全体の考え方と、企業・商品・社内の3つの分け方は、ブランディングの記事で解説しています。

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何のためにするか

会社として何を大事にし、何を約束するかが伝わると、相手ごとに次のような変化が期待できます。

相手期待できる変化
取引先・お客様初めての相手でも、頼んでよい会社かを判断しやすくなる。値段だけで比べられにくくなる
求職者どんな考えの会社で、何をする仕事かが分かり、合う人が応募しやすくなる
社員迷ったときに、会社として何を優先するかの基準になる
地域の人地元で何をしている会社かが分かり、名前を思い出してもらいやすくなる

どの相手にとっても、その会社が何をしていて、何を大事にしているかが分かることが、判断の土台になります。何をしている会社か分からなければ、取引先はほかの会社と比べにくく、求職者も応募を決めにくくなります。

会社として何を約束するかが伝わると、取引先や求職者には選ぶ理由が、社員には日々の仕事で判断する基準が生まれます。 求職者に向けた取り組みは、採用ブランディングの記事で詳しく解説しています。

中小企業では、会社そのものが選ばれる理由になる

コーポレートブランディングというと、大きな会社が専任のチームを設けて、時間をかけて進めるものに見えるかもしれません。けれど、中小企業にこそ関わりの深い取り組みです。

注文を受けてから作る仕事や、取引先の工程の一部を引き受ける仕事では、店頭に並ぶ商品のように、完成品を見せて選んでもらうことが難しくなります。取引先が選んでいるのは、その会社に任せたら何をしてくれるか、つまり会社そのものです。こうした受託型の会社が、何を手がかりに始めればよいかは、BtoBブランディングの記事で紹介しています。

中小企業では、社長が会社の顔にもなります。社長が中心になって言葉にすれば、専門の部署を設けなくても始められます。代替わりや事業の転換、採用で人が集まりにくくなったときは、始めるよいきっかけになります。

中小企業では、会社そのものが選ばれる理由になり、社長が中心になれば専門の部署を設けずに始められます。

会社として何を約束するかを、一文にする

最初に決めるのは、見た目ではなく言葉です。会社として何を伝えたいかがあいまいなままでは、どんなロゴや色を選べばよいか判断できません。まず言葉で方向を決め、見た目はそのあとに決めます。

一文にする前に、お客様がなぜ自社を選んでくれたのか、社長と社員が仕事で大事にしていること、ほかの会社と比べて自社が得意としていることを、材料として集めます。そのうえで、約束の土台として、次の2つを言葉にすることが多いです。すでに経営理念や社是がある会社は、それを土台にしてかまいません。

  • ミッション:何のために、この仕事をしているか
  • ビジョン:どこへ向かい、どんな状態をつくりたいか

ARROWSでは、ミッションを「地方の中小企業を集客力で強くし、日本を強くする。」、ビジョンを「最先端を、当たり前に。」と決めました。最初は「地方の中小企業を集客力で強くすることで、日本を強くする。」でしたが、翌日、言い方を磨いていまの文にしています。一文は、一度で決めきらなくてかまいません。読み返して、言いにくいところ、伝わりにくいところを直していきます。

ミッションとビジョンが決まったら、それをもとに、外に向けて「誰に、何を約束する会社か」を言う一文をまとめます。この記事でいう会社の約束の一文は、これのことです。

ARROWSの会社案内のページでは、いちばん上で「ARROWSは、デジタルマーケティングとブランディングの会社です。」と名乗り、続けて「中小企業が問い合わせを増やせるよう、戦略を描くところから、SEO・AI検索対策(AIO)、Webサイトの制作、ブランディングまでを引き受けます。」と書いています。この2文目では、約束する相手は「中小企業」、約束することは「問い合わせを増やせるようにすること」です。そのあとに並ぶ仕事の名前は、約束を果たすための手段です。仕事の一覧だけでなく、相手にどうなってもらうかまで書くと、約束の一文になります。

言葉を先に決め、見た目はそのあと 選ばれている 理由を集める 約束を 一文にする 見た目を 決める 載せている場所を そろえる 続ける 赤い枠は、この記事で詳しく扱うところ
図2:言葉を先に決め、見た目はそのあと。この記事では、約束を一文にするところと、説明を載せている場所をそろえるところを詳しく扱う。

最初に決めるのは、ロゴや色ではなく、会社として何を約束するかという言葉です。 材料を集めて言葉にするのは、社長と社員の仕事です。一文にまとめきれないときは、まとめるところから外の人に頼めます。その場合も、材料になる経験や考え、お客様の声は、社内から持ち寄ります。

決めた一文に、ホームページ・会社概要・営業資料の説明をそろえる

一文が決まっても、それが相手に届かなければ、何も変わりません。相手が会社を知るのは、ホームページ、会社案内、営業資料、名刺など、会社が外に出しているものからです。そこで、会社の説明を載せている場所を書き出し、決めた一文と食い違っていないかを確かめます。ミッションや会社の約束の一文は、どこでも同じ言葉で書きます。場所ごとに長さの違う紹介文は、同じ意味になるようにそろえます。

書き出すときは、次のような場所を見ていきます。

場所見るところ
ホームページのトップいちばん上の見出しと、その下の一文
会社案内・会社概要のページミッション・ビジョン、事業内容の行
サービスのページ冒頭の説明
営業資料・会社紹介の資料表紙と、最初のページ
名刺・封筒社名の下の一行
SNSのプロフィール自己紹介の文
求人票・採用のページ会社の紹介の文
会社の説明を載せている場所を、決めた一文にそろえる 会社の約束 (一文) ホームページのトップ 会社案内・会社概要 サービスのページ 営業資料 名刺・封筒 SNSのプロフィール 求人票・採用のページ 言い方を変えたら、場所の一覧に戻って順に直す
図3:会社の説明を載せている場所を書き出し、決めた一文にそろえる。

そろえるときにいちばん起きやすいのは、言い方を磨いたあとに、古い文が残ることです。決めた一文だけでなく、ミッションの文でも同じことが起きます。ARROWSでも、ミッションの言い方を変えたとき、公開している会社案内のページには、まだ前の文が残っていました。気づいたその日に直しています。

言い方を変えるたびに、書き出した場所の一覧に戻り、1つずつ直していきます。場所の一覧があれば、どこに古い文が残っているかを探し回らずに済みます。Webの文はその日のうちに直せます。名刺や会社案内などの印刷物は、次に刷るときに直すと決めておきます。

会社の説明を載せている場所の一覧をつくっておき、言い方を変えたら、その一覧に戻って直します。 一覧をつくることと、名刺や営業資料、SNSの文を直すことは、自社でできます。ホームページの文の差し替えは、サイトを作った会社に頼めます。会社概要の事業内容の書き方と、ほかの場所とそろえる手順は、会社概要の記事で解説しています。

関連記事会社概要の書き方とは?載せる項目と記入例、載せたくない情報の扱いまで

検索やAIの答えにも、会社の説明が同じように伝わるようにする

会社のことを読むのは、人だけではありません。検索エンジンやAIも、Web上に書かれている文を手がかりに、会社が何をしているかを読み取ります。社名で検索されたとき、検索結果やAIの答えで会社がどう説明されるかは、ホームページなどに書いてある文に左右されます。

社名、住所、電話番号の書き方を1つにそろえることは、コーポレートサイトの記事で紹介しています。コーポレートブランディングで加えたいのは、会社の約束の一文に合わせて、会社の説明そのものも同じ意味にそろえることです。ホームページのトップ、会社概要の事業内容、SNSのプロフィールで会社の説明が食い違っていると、どんな会社なのかが伝わりにくくなります。

ホームページには、会社の情報を検索エンジンが読み取りやすい決まった形で書き込む方法もあります。構造化データと呼ばれるもので、Googleの組織(Organization)の構造化データの資料には、会社の名前や住所と並んで、〈組織の詳細な説明〉を書く項目が挙げられています。この資料はGoogle検索に向けたものですが、ここに書く説明も、決めた一文とそろえておきます。

会社の約束の一文に合わせて、人と機械の両方に同じ意味で 会社の約束(一文) 人が読む場所 ・ホームページのトップ ・会社概要の事業内容 ・SNSのプロフィール 検索エンジンやAIが読み取る場所 ・ページに書いてある文 ・構造化データの会社の説明  (Google検索向け)
図4:会社の約束の一文に合わせて、人が読む場所と、検索エンジンやAIが読み取る場所の両方に、同じ意味の説明を書く。構造化データはGoogle検索に向けたもの。

ただし、検索結果やAIの答えで会社をどう紹介するかは、検索エンジンやAIの側が決めます。構造化データを入れれば思いどおりに紹介される、というものではありません。そのうえで、書き込んだ説明が、ページに書いてある文やほかの場所の説明と食い違っていれば、どんな会社なのかは伝わりにくくなります。大事なのは、どこを読んでも、何をしていて、何を約束する会社なのかが同じように伝わることです。

会社の約束の一文に合わせて、人が読む場所にも、検索エンジンが読み取る場所にも、同じ意味の説明を書きます。 SNSのプロフィールなど、自社で書き換えられる場所は自社で直し、構造化データを書き込む作業はサイトを作った会社に頼めます。検索エンジンやAIが会社をほかと見分ける仕組みは、エンティティSEOの記事で解説しています。

関連記事エンティティSEOは、自社を一意にする設計

社内に浸透させ、続ける

社外に向けた説明をそろえても、社員の日々の言動がそれと食い違っていれば、相手に伝わる会社の姿もばらばらになります。社内に浸透させるには、言葉を掲げるだけでなく、その一文に沿った行動を、社員を評価する基準や、迷ったときに判断する基準に結びつけることが効きます。社内での進め方は、ブランディングの記事の後半で解説しています。

続けるためには、年に1回など時期を決めて、一文と、それを載せている場所の一覧を見直します。事業が変われば、約束も変わることがあります。そのときは、第5章の場所の一覧に戻って、全部の場所を直します。

決めた一文を日々の行動に移し、時期を決めて見直し続けることで、会社のブランドが育ちます。

ARROWSのブランディング

ARROWSのブランディングでは、ロゴや見た目から始めずに、経営方針と事業の強み、狙うお客様を整理し、選ばれる理由を決めるところから始めます。経営者の方のお話、社史、現場の方の言葉、お客様の声を集め、会社の中から選ばれる理由を掘り出します。方向性は3つの案を比べて決めます。

決まった方針をもとに、タグラインや会社の紹介文をつくり、色や書体などの使い方も決めます。それらを、社内外で共有できる資料にまとめます。サイト、会社案内、名刺、SNSまで、一貫した方針で手がけます。

まとめ

コーポレートブランディングは、会社として選ばれる理由をつくり、伝えていく取り組みです。中小企業では、まず会社として何を約束するかを一文に決め、その一文に合わせて、ホームページ、会社概要、営業資料、そして検索やAIが読み取る場所まで、会社の説明をそろえるところから始められます。

まずは、自社が誰に、何を約束する会社なのかを一文で言ってみて、ホームページのトップと会社概要の事業内容が、その一文と食い違っていないかを確かめてください。